内部統制の現在とこれから~J-SOX法対応コストの削減~
- SOX法対応コストの削減
アンケート調査でも高い関心が寄せられたJ-SOX法対応コストの削減について、そのポイントを以下にご紹介します。
http://segroup.fujitsu.com/internalcontrol/research/chapter2.html
J-SOX法対応コストの構造
まず、J-SOX法対応コストの構造について、見てみましょう。
J-SOX法対応コストは、大きく、「構築・保守コスト」、「運用(業務)コスト」、「評価・監査コスト」の3つからなると考えることができます。
構築・保守コストは、内部統制システムを構築して維持するためのコストです。RCM等の内部統制文書を作成・維持するコストや、不十分な統制手続きを改善するために業務手順や帳票を変更するコスト、業務規程や業務マニュアルを整備するコストなどからなります。初年度対応においては非常にコストがかかりますが、2年目以降は特別な対応をしなくても大きく減ると考えられます。
運用(業務)コストは、業務の中に折り込まれた統制手続きを遂行するためのコストです。このコストはJ-SOX法以前から発生していたコストですが、J-SOX法対応のために統制手続きが厳格化されたり追加されたりしたことにより、従来よりも増えていると推測されます。日常的に発生するコストのため、現場の負担感に直結する性格があります。
評価・監査コストは、内部統制システムが機能しているかを評価(内部監査)するコストや、その結果を外部監査人に監査してもらうコストです。このコストはJ-SOX法施行以前にはなかったコストで、かつ、今後も継続的に発生するコストです。また、監査部門だけでなく、監査に対応する業務部門でもコストが発生します。初年度対応で非常にコストがかかったうえに、2年目以降もさまざまな工夫をしなければ、このコストは大きくは減らないと考えられます。
以上により、評価・監査コストの削減が真っ先に取り組むべき課題であり、運用(業務)コストの削減が次に取り組むべき課題であると言えます。アンケートの回答を見ても、多くの企業がこの認識に立って対応を進めていることがわかります。
では、アプローチの効果の高い順に、各コスト削減のポイントをご紹介しましょう。
評価・監査コストを削減するには
評価(内部監査)や外部監査に伴うコストを減らすには、どうすればよいでしょうか。
これには、「評価対象コントロール数の削減」と「1コントロールあたりのコストの削減」の2つのポイントがあります。
ポイント1. 評価対象コントロール数の削減
スコーピングを見直したり、評価対象コントロールを重要なキーコントロールに寄せたりして、評価すべきコントロール数を削減します。
ミスや不正が起こらないように業務を改善し、コントロールを設定しなくてよい業務とすることで削減できます。例えば、IT化を進め人手による作業を排除することで、ミスや不正のリスクが存在しない業務とすることができます。
1つのコントロールで多くのリスクを低減できるよう、コントロールを見直します。
ポイント2. 1コントロールあたりのコストの削減
経営者評価の信頼性を上げ、外部監査人に経営者評価への依拠度を上げてもらうことによって、外部監査工数を削減します。このためには、内部統制に対する現場部門の理解度を上げ、基本動作を徹底させて、不用意な不備発生を防止することが重要です。
「経営者評価に占める現場部門の自己点検の割合」を上げることにより内部監査工数を削減します。
運用テストを簡便にできるコントロールに変更することにより、自己点検、内部監査、外部監査の全ての工数を削減します。すなわち、リスクを正しく捉えてコントロールをシンプルなものにし、テスト手続きを簡素化します。
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運用(業務)コストを削減するには
運用(業務)コストが大きい(現場の負荷を増やしている)コントロールを改善するにはどうすればよいでしょうか。ここでは、コントロールの質を保持したまま人の負担を軽減することがポイントです。
統制の手続きを簡潔な内容に変更することで、現場の負担を軽減します。
リスクを正しく捉えて、必要以上に複雑なコントロールにしないようにします。
業務パターンを整理・統合し、同じ統制手続きを広い範囲で適用できるようにします。これは、コントロールの場合分けを極力なくす、ということです。
従来より行っている作業や使用している帳票を活かす工夫をして、統制のためだけの作業を回避します。
ITによる自動的な統制は、人に負担を与えず、運用コストが少なく、しかも確実です。そのため、手動統制からアプリケーションによる自動統制に置き換えることを検討します。
このようなコントロールの改善は、業務の標準化や簡素化、ルールや帳票類の改善、業務のIT化などをもたらし、業務の効率化や有効性の改善にもつながります。また、将来的には業務改革にも発展するものとなるでしょう。
業務のIT化と評価・監査コストの削減
業務のIT化には、運用(業務)コスト削減に加えて、次のような評価・監査コスト削減のメリットもあります。
手動統制とは異なり、ITアプリケーション統制は少数のサンプルで検証ができます。
前年度からの変更のないITアプリケーション統制は、運用テストが省略できます。
ただし、以下のような留意点がありますので、IT化を進める際には考慮してください。
アプリケーションの作り次第で運用テストの負荷が大きく変動します。そのため、アプリケーションの改修・追加では運用テストへの対応も意識してください。
IN/OUTのデータや作業ログから簡便にサンプル抽出できないと、運用テストの工数が大幅に増加します。
統制上肝となるファイルやデータテーブルには、画面表示や帳票出力の機能を追加できないか検討しましょう。
高権限IDを要求する機能には、作業ログ出力機能を付加するようにしましょう。
IT全般統制を保証できないと、ITアプリケーション統制のメリットが損なわれてしまいます。メリットを損なわないために、IT全般統制の整備(不備改善)を並行して進めてください。特に、変更管理、(プログラムライブラリなどへの)アクセス管理が大事です。
構築・保守コストを削減するには
初期構築後の構築・保守コストの大部分を占めるのは、業務実態の変化に対応するための「内部統制文書(いわゆる3点セットなど)」のメンテナンスコストです。このコストを削減するには、「メンテナンス対象を削減する」および「メンテナンスのやり方を変える」という2つのポイントがあります。
ポイント1. メンテナンス対象の削減
文書化されている業務フローそのものを減らして、出来るだけメンテナンスしなくて良いようにします。運用(業務)コストの削減で述べた「業務パターンの整理・統合」がここでも有効です。また、同じリスクに対応するコントロールが複数存在し、キーとなるコントロールが適切に運用されている場合は、補完的な(重要度の低い)コントロールを文書化の対象から外すことも考えられます。
ポイント2. メンテナンスのやり方の変更
初期構築段階では内部統制推進部門が行っていた内部統制文書のメンテナンスを、各部門に移管します。これによって、メンテナンスコストの最小化・埋没化が図れるうえ、よりタイムリーで、より実態を的確に反映したメンテナンスとなることが期待されます。
メンテナンスを各部門に移管した後は、内部統制推進部門では、各部門のメンテナンス担当者の育成や文書改訂時のレビュー等を実施して、文書品質を管理します。また、内部統制文書のステータスを随時点検し、メンテナンス漏れが起きていないかチェックします。これによって、全社(グループ)として均一な文書品質を維持します。
内部統制推進部門を支援する仕組みとしては、改版承認ワークフロー機能付きの文書管理ツールの導入をお奨めします。
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