他社の「重要な欠陥」「不備」から学ぶ、内部統制2年目の対策
1 IT統制における「重要な欠陥」は2件と意外にも少ない結果に~3月期決算の報告書から
http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/08/10/naibutousei_abeam/?rt=na
日本版SOX法の施行が2008年4月から始まり、上場企業は2009年3月期から自社の内部統制の整備状況・運用状況を評価した「内部統制報告書」を義務づけられ、今年6月末には内部統制報告書の提出が締め切られ、内部統制に「重要な欠陥」があると報告した企業の存在が明らかになった。ここでは、アビームコンサルティングで内部統制に関するコンサルティングの統括責任者 プリンシパル プロセス&テクノロジー事業部 FMCセクターリーダーを務める中野洋輔氏に、今回の内部統制報告書の内容、そこから企業が学ぶべきことについて話を聞いた。
- これまで日本版SOX法による内部統制監査についてさまざまな憶測が飛び交っていたが、初年度の結果が出揃った今、どのような見解を持っているか?--
中野氏: 今回、内部統制報告書について「重要な欠陥」もしくは「意見不表明」とした企業は67社であり、全体の約2.4%だった。SOXに対する米国のそれは約14%だった。つまり、日本は米国に比べて内部統制に重要な欠陥があったと意見表明した企業がかなり少ないという結果が出ている。これは予想していたよりも少ない。
- その理由は何か?--
中野氏: 1つは米国と日本のカルチャーが違う、つまり、日本では不適正な意見を表明することをあまり好まないということがある。今回の結果は、日本社会らしい"着地点"に落ち着いたと言えよう。一方で、実施企業並びに監査法人がきちんと対応をしたことの表れと言える。「重要な欠陥」を表明した企業の中には日本経済を支える大手企業も含まれており、一部危惧されていた監査法人と企業の"馴れ合い"はなく、法の下、きちんと内部統制の仕組みが評価されたのではないかと考えている。
- 今回、開示された「重要な欠陥」内容について教えてほしい。--
中野氏: まず、領域においては「決算・財務プロセス」が38件、「業務処理統制」が30件、「全社統制」が22件、「IT統制」が2件という結果が出ている。この事から個別のプロセスにおいて、欠陥が見つかっていることがわかる。
- 重要な欠陥が見つかったプロセスには経理上の数字も不具合が生じているのか?--
中野氏: そうとは限らない。あくまでも、内部統制の観点から見て「重要な欠陥」があるプロセスという話だ。逆に、論理的には、数字に問題があるプロセスも内部統制の観点から問題がなければ「重要な欠陥」にはならない。ただし、数字に問題があれば、関連したプロセスもおかしいケースがほとんどだ。
- IT統制において「重要な欠陥」が2件しか報告されなかったのは意外だが。--
中野氏: 金融庁のガイドラインでも示されているが、IT統制への対応は必ずしもIT製品を用いることにつながらない。今回は手作業など、「代替的統制」で対処した企業が多かったのではないかと思われる。ただ、初年度ということでIT統制に対する監査は若干緩かったかもしれず、今後、IT統制も強化していったほうがよいだろう。
また、手作業による処理は工数がかかるので注意が必要だ。そもそも、内部統制に関わる作業自体、専門的な知識やスキルが必要であり、そうした人材を企業内部で育成して抱えるにはそれなりのコストがかかる。したがって、内部統制業務の効率化を考えると、システム化や専門のサービスを利用するのも有効な手だと思う。実のところ、多角化している大企業は内部のリソースと当社のようなサービスをうまく使い分けている。海外の事業所の評価を行う場合、言語や現地の法規など、一企業ではなかなか対処しきれない課題が存在する。こうした部分は、ぜひ専門家によるサービスを活用して、効率よく作業を進めてもらいたい。
2 企業は自社の姿勢をアピールする手段として内部統制報告書を利用すべき
- 「重要な欠陥」「意見不表明」の原因は何だったのか?--
中野氏: 「モニタリング不備」が31件、「経理のスキル不足」が26件、「人員不足」が22件と原因の上位3位となっている。この結果から、内部統制の欠陥は「ヒト」に起因するケースが多いことがわかる。内部統制の評価において人材がカギとなるということだ。
内部統制を評価する際、企業全体のプロセスを見渡すことが不可欠であることを踏まえ、企業では内部統制を人材育成の一環として利用してはどうだろうか? 具体的に言えば、内部統制業務を経営者までのワンステップにするということだ。なぜなら、内部統制の取り組みでは、企業全体を把握することが行われ、これは経営者にとって必要なことだからだ。内部統制はグループ経営の運営にもかかわることであり、企業の発展のために内部統制を進める中で次世代のリーダーを育成してもらいたい。
- 今回提出された内部統制報告書から感じたことがあれば、聞かせてほしい。--
中野氏: 金融庁から見本となる様式が公開されているが、 同じ「内部統制報告書」といえど、企業によって表現や書式が異なっていたのが興味深かった。参考にしてもらいたいのは、丁寧に開示していた企業である。自社の内部統制の整備に向けて行ったことを仔細に開示することは、言い換えれば、ディスクロージャーに対する企業の姿勢を示すこと。日本企業は内部統制にきっちりと取り組んでおり、もっと情報を開示することで自社の姿勢をアピールしてもよいのではないだろうか。
- 内部統制報告書を終えて、企業は現在どのようなことを考えているのか?--
中野氏: 2006年に日本版SOX法の施行が決定してからこれまで、企業は内部統制の構築に向けて大規模なプロジェクトを設けて取り組んできたが、非常に長い道のりだった。その成果がようやくまとまったところであり、"ホッとしている"というのが正直なところであろう。また、2年目の対応についても、積極的に取り組んでいくというよりは、初年度の反省を生かしつつまとめていくという感じになるのではないだろうか。本格的な改善のステップは3年目以降からになると思われる。
また、内部統制初年度の結果から、業務プロセスの標準化に重要性を実感した企業が多いようだ。内部統制にかかるコストは、業務を分散している企業において、業務を集中化している企業の2倍に及ぶ。したがって、業務プロセスの標準化を行わないとコストにも跳ね返ってくるのだ。企業が生き残るためにも着手すべきだろう。
- 内部統制に取り組む企業にアドバイスをお願いしたい。--
中野氏: 内部統制を単なる「法対応」にとどめないでほしい。繰り返し話しているように、内部統制に時間とお金がかかるのは事実だが、それを義務としてとらえてしまうと、どうしても後ろ向きな取り組みになってしまう。内部統制は取り組み方次第で、企業の発展につなげることができる。そうすれば、内部統制にかかる時間やお金は、コストではなく投資となる。経営者をうまく巻き込んでいる企業ほど、内部統制を企業経営に生かすことができているようだ。
現在も、日本企業ではグローバル化の影響で、構造変革を余儀なくされている。それに伴い、プロセスやシステムのあり方も変わってきており、これまでと同じ対応の仕方では企業の発展は望めない。内部統制を企業発展のための一手段として、ぜひとも積極的に取り組んでいただきたい。
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