【連載:工事進行基準対策の第一人者に聞く】(1)工事進行基準の概要と各企業の取り組み
2009年4月から、「工事進行基準」が原則適用となった。しかし、ほとんどの企業が対応を完了できていないのが現状だ。この連載では、工事進行基準について、のべ600社以上の企業に対し実務対応について伝えてきた実績をもつアドライト 代表取締役社長/公認会計士の木村忠昭氏が、各社の現状をふまえた対応のポイントを解説する。第1回は、工事進行基準の概要と各企業の取り組みについてお届けしよう。
≫【特集】今から間に合う工事進行基準対策とは~見えてきた、工事進行基準に対する対応の実態と課題~
(09/06/10)
http://www.sbbit.jp/special/11909/
【連載一覧へ】
工事進行基準とは
ご存じのとおり、今年4月から、「工事契約に関する会計基準」の施行に伴い、「工事進行基準」が原則適用となった。しかし、基準施行後の現時点においても、工事進行基準の対応について、具体的な適用方法についての相談が絶えない。この連載では、実際の弊社支援事例に基づく工事進行基準を適用する上での実務上のポイントや、弊社が2009年4月に実施した『工事進行基準の対応状況に関する実態調査』の結果を基に、各社の現状をふまえた対応のポイントを解説していく。今回は、工事進行基準の概要と各企業の取り組みについて詳しく見ていきたい。
工事進行基準の導入の背景には、国際財務報告基準(IFRS)との調和を図ろうという大きな動きがある。現在も日本の会計基準を国際的な会計基準に近づける会計基準の統合作業(会計コンバージョン)が2011年度を目途に進められており、大きく見るとその中のひとつが今回の「工事契約に関する会計基準」の施行である。国際財務報告の全面適用(アドプション)については、2015年を目標に検討が進められている最中であるが、いずれにしろ、会計基準の導入によって、国際財務報告基準と同様、工事進行基準が原則適用されることとなった。
企業経営における工事進行基準の重要性
しかし、今回の工事進行基準は、単なる制度の変更という以上に大きな意味がある。なぜなら、ソフトウェア開発企業やIT関連企業にとって、工事進行基準とはすなわちプロジェクト管理そのものであるといっても過言ではないからだ。
具体的には、工事進行基準適用のためには、見積もりの精度を向上させるためのプロジェクト管理体制の強化が必要となってくるが、このことが、プロジェクト型での開発を進める企業にとって大きな経営課題となる。その課題を「財務会計」と「管理会計」の2つの側面から見ていく。
まず、財務会計上の側面であるが、これは制度会計への対応の課題が挙げられる。工事進行基準の適用のためには、これまでのソフトウェア業界特有の会計慣行や会計基準に準拠することはもちろん、開発コストの見積もりや集計のために、高いレベルの原価計算制度を構築することが必要になってくる。また、2009年3月度よりスタートした内部統制報告制度(日本版SOX法)の対応のためにも、重要な業務プロセスとして大きく関連してくることから、内部統制への留意が必要になってくる。
次に、管理会計上の側面である。工事進行基準の適用のために、工事進捗度や工事原価総額等の見積もりが必要となってくる。そのため企業は、単に経理が数字を集計するだけでなく、開発現場も合わせた各部署が協力した上で、精度の高いプロジェクト管理体制の構築をしなければならない。これは、プロジェクトごとに利益の着地を予測し経営管理を行う上でも重要な課題となってくる。
このように、工事進行基準の適用は、経営管理の根幹にも直結する多くのテーマを孕み、一朝一夕でできるものではない。しかし一方で、適用することができれば経営上大きなメリットをもたらすものでもある。実際に、今回の工事進行基準の適用を契機に、プロジェクト管理体制の見直しを行う企業も多く見られる。
スポンサードリンク