いまさら追加された「内部統制Q&A」のポイント
金融庁はさる4月2日に、24問の「内部統制報告制度に関するQ&Aの追加版」を発表しました。Q&Aについては、2008年6月24日に47問のQ&Aを追加公表していますので、今回は2度目の追加になります。回答されている内容は、おおよそ想定の範囲内でしたが、実務担当者にとっては「内部統制報告書の文例」などは参考になります。
http://www.atmarkit.co.jp/im/cits/serial/soxcolumn/14/01.html
追加された主な項目は:
「重要な欠陥」の判断(問68~70、75、77)
子会社の売却・業績悪化などによって重要な事業拠点の選定指標が一定の割合に達しないなどの場合の取扱い(問73、74)
内部統制報告書の記載内容と例文(問101~107)
などです。
内部統制報告書の記載内容と例文については、金融庁が発表した資料「内部統制報告制度に関するQ&A(追加分)」の20ページ以下をご参照ください。
そのほか、よく起こりそうな事例についてのQ&Aを選択し、解説として筆者の分析を添えていますので、ご参考になさってください。
どんな場合に「重要な欠陥」になるのか?
■【問68】重要な欠陥の判断(財務諸表監査による指摘)
(問68) 期末日後の財務諸表監査の過程において、財務諸表に記載する予定の数値などに誤りが発見された場合には、「決算・財務報告プロセスに係る内部統制に重要な欠陥がある」と判断されることになるのか。
(答え抜粋) 1.「重要な欠陥」とは、「財務報告に重要な影響をおよぼす可能性の高い内部統制の不備」とされている。従って、財務諸表監査によって財務諸表に記載する予定の数値などの誤りを指摘されたことが、直ちに重要な欠陥に該当するものではなく、誤り(虚偽記載)を生じさせた内部統制上の不備の金額的・質的重要性を勘案し、重要な欠陥に該当するかどうかを判断することとなる。
2.なお、その際には、監査人から指摘された誤りが「会社の内部統制によって防止・発見できなかったのかどうか」という観点から、検討する必要があるものと考えられる。
◆筆者の分析
これまでの理解どおり、誤りが即座に「重要な欠陥」となるのではなく、「誤りに至るプロセスの内部統制が、“重要な欠陥”に相当するかどうかを評価・判断すること」が、重要であることが確認されました。
■【問70】重要な欠陥の判断(決算短信)
(問70) 決算短信を公表後、会社の内部統制によって、決算短信の内容に重要な誤り(虚偽記載)を発見し、有価証券報告書および内部統制報告書を提出する前に決算短信を訂正した。この場合、決算短信を訂正したことをもって「重要な欠陥」があると判断しなければならないのか。
(答え抜粋) 1.内部統制報告制度の対象とする内部統制は、(連結)財務諸表を中心とした財務報告が法令などに従って、適正に作成されるための体制である。
2.従って、決算短信が訂正されたことをもって直ちに重要な欠陥があることにはならず、決算短信公表後に、会社の内部統制が有効に機能したことによって発見された虚偽記載を訂正し、有価証券報告書が適正に開示されるのであれば、「重要な欠陥」には該当しないものと考えられる。
◆筆者の分析
これも基本的には、問68と同様の趣旨ですね。
重大な欠陥の判断基準
■【問71】有価証券報告書の訂正報告書の提出と内部統制報告書
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(問71) 財務報告に係る内部統制は有効である(重要な欠陥がない)と記載した内部統制報告書を、有価証券報告書と併せて提出した後に、財務諸表に記載した数値に誤りがあったとして有価証券報告書の訂正報告書を提出することになった。この場合、「重要な欠陥」がないと記載した内部統制報告書についても、併せて訂正報告書を提出しなければならないのか。
(答え抜粋) 1.内部統制報告制度の対象とする内部統制は、(連結)財務諸表を中心とした財務報告が法令などに従って適正に作成されるための体制である。
2.従って、有価証券報告書の訂正報告書が提出されたことをもって、直ちに連動して「財務報告に係る内部統制に重要な欠陥がないと記載した内部統制報告書」について、訂正報告書を提出しなければならないということにはならない。ただし、有価証券報告書の訂正報告書を提出する原因となった誤りを検討し、当該誤りが内部統制の評価範囲内からの財務報告に重要な影響を及ぼすような内部統制の不備から生じたものであると判断される場合には、当該内部統制報告書についての訂正報告書の提出が必要になるものと考えられる。
3.なお、適切に決定された評価範囲の外から重要な欠陥に相当する事実が発見された場合には、内部統制報告書に記載した評価結果を訂正する必要はないと考えられる。
◆筆者の分析
これも決算短信の修正と本質的には同じ考え方ですね。あくまでも、「その誤りに至るプロセスの内部統制に重要な欠陥があるかどうか」の評価を問うものです。しかしながら、有価証券報告書が「法律の要求している法定情報開示」であるのに対し、決算短信は「証券取引所の要求する開示」であることから、その重みは幾分異なるかもしれません。
■【問75】重要な欠陥の判断(売掛金の残高確認)
(問75) 監査人が期末日を基準として実施した売掛金の残高確認において、得意先への売掛金の照会(確認状)に対する回答額と帳簿残高に差異があった。監査人から当該事実は重要な欠陥であると指摘を受けたが、直ちに重要な欠陥であると判断しなければならないのか。
(答え抜粋) 1.監査人が行った残高確認において、回答額と帳簿残高に差異があった場合、会社がすでにその原因を解明したうえで差異の調整を実施し、適切な残高に修正している場合には、会社の内部統制は有効に機能していると判断できるものと考えられる。
2.一方、監査人が行った照会(確認状)による差異について、会社が当該差異の原因を明らかにできない場合や、適切に差異の調整を行い残高の修正を行わないような場合には、内部統制上の不備によるものとして、重要な欠陥となり得る場合があると考えられる。
◆筆者の分析
要するに、差異がある場合に「会社内部で自律的にその修正を行えるようなプロセスが機能しているかどうか」が問題なのです。
重要な事業拠点の選定が一定割合に達しない場合の取扱いなど
■【問74】業績悪化などにより重要な事業拠点の選定指標が一定の割合に達しないなどの場合の取扱い
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(問74) 評価範囲については監査人と協議し、前年度の連結ベースの売上高を基本に当期の業績予想も踏まえて決定することとしている。重要な事業拠点として選定されている親会社の業績悪化や期中の大幅な為替変動などの結果、期末日時点において、当初の評価範囲とした事業拠点の売上高などの合計が一定割合(おおむね2/3)に達しなくなる場合には、売上高の2/3に達するまで、評価対象に新たな事業拠点(子会社)を加えなければならないのか。
また、仮にこのような事情に基づいて、新たに評価対象に加えた事業拠点の内部統制の一部について、十分な評価手続きを実施できない場合には、「やむを得ない事情」に該当すると考えてよいか。
反対に、連結グループ全体の売上高が減少したことにより、当初の評価範囲とした重要な事業拠点の売上高などの合計が80%になってしまったが、おおむね2/3程度になるまで重要な事業拠点の主要な勘定科目に係る業務プロセスを絞り込んでもよいか。
(答え抜粋) 1.経営者は評価範囲を決定する計画段階で、前年度の売上高なども参考にし、当期の業績予想も一定程度考慮して評価範囲を決定することが適当であると考えられる。計画段階でそうした事情も考慮して適切に評価範囲を決定しているのであれば、全社的な内部統制が有効であることを前提として、一定割合を著しく下回らない限りにおいて、選定している重要な事業拠点をもって適切な評価範囲であると判断することが可能であり、当期の内部統制の評価範囲を見直す必要はないと考えられる。
2.そのうえで、仮に一定割合を著しく下回るとして新たに評価対象に加えた事業拠点(子会社)があり、その一部について十分な評価手続きを実施できない場合、そのことをもって直ちに「やむを得ない事情」には該当しない場合があるが、その際にも、評価範囲の制約としてその内容を記載することとなる。
3.実施基準において、売上高などの一定割合(おおむね2/3)は重要な事業拠点の選定に係る指標であり、重要な事業拠点における事業目的に大きくかかわる勘定科目に至る業務プロセスについては原則としてすべてを評価の対象とするとされていることから、当該業務プロセスを絞り込むことは適切でない。
なお、当初の評価範囲とした事業拠点の売上高などの合計額が一定割合(おおむね2/3)を超過することとなった場合、重要な事業拠点自体を一定割合まで除外することも考えられる。その際には、すでに当初の評価範囲に基づいて内部統制の整備などを実施しているものと考えられること、および当初の評価範囲の決定に際しては売上高などの指標以外の要素も勘案して決定している場合もあることから、当該超過の事実により、評価範囲の見直しをするときには、慎重に検討を行う必要がある。
◆筆者の分析
この一定割合(おおむね2/3)による重要拠点の合計は、会社により7割になるところもあれば、8割になるところもあります。上位の子会社の売り上げの減少によって、当初選定した重要拠点の割合が、例えば6割を切るような場合には、「著しく下回る」に該当するのではないでしょうか。
期末日後の手続き、決算日が相違する子会社、取締役会の承認
■【問76】期末日後に実施される統制手続き
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(問76) 売上プロセスにおける最も重要な統制手続きとして、期末日の売掛金残高を対象に実施する管理手続きを位置付けているが、期末日現在の売掛金残高を対象とした管理手続きの運用評価は、期末日までに完了せず期末日後にもかなりの期間実施される。このため、監査人から、当該統制手続きは期末日時点で存在しているものと確認できないのではないかと指摘され、新たな統制手続きを構築し、当該手続きを評価対象とするようにいわれた。しかし、従来より同様の管理手続きを行っており、それを確認することで十分と判断してもよいのではないか。
(答え抜粋) 1.実施基準では、経営者による内部統制評価は、期末日を評価時点として実施することとされているが、運用状況の評価の実施時期は、期末日後であっても問題なく、評価時点(期末日)における内部統制の有効性を判断するための適切な時期に評価を実施すれば足りるとされている(実施基準2 3(3)4ハ)。
2.また、監査人による内部統制の整備状況および運用状況の有効性の検証については、経営者の評価がすべて完了していない場合であっても、実施することが可能であると考えられる(問50参照)。
3.ご指摘の売掛金残高に係る管理手続きが、最も重要な統制手続きと位置付けているのであれば、より適切な内部統制を構築し評価することが必要になるものと考えられるが、売掛金の管理手続きは、同様の手続きが前年度や月次あるいは四半期にも行われていると考えられ、監査人は経営者の暫定的な評価について、その妥当性の検証を行っておくことも考えられる。従って、必ずしも従来の統制手続きを変更し、新たな統制手続きを構築し直さなければならないということではないと考えられる。
◆筆者の分析
しかし、年度決算に1度しか行わない内部統制監査の場合、前年度の決算時期にしかるべき統制手続きと、その評価が行われていない場合には、監査人から指摘が行われる恐れが強いので注意してください。
■【問79】決算日が相違する子会社の内部統制の評価
(問79) 内部統制府令5条3項では、事業年度の末日が連結決算日と異なる連結子会社については、連結子会社の事業年度の末日後連結決算日までの間に当該連結子会社の財務報告に係る内部統制に重要な変更があった場合を除き、連結子会社の事業年度の末日における内部統制の評価を基礎として行うことができることとされているが、「当該連結子会社の財務報告に係る内部統制に重要な変更があった場合」とは、どのように判断すればよいのか。
例えば、連結子会社の事業年度に係る財務諸表を基礎として会社の連結財務諸表を作成している場合において、連結子会社の事業年度の末日後に当期の連結財務諸表には影響をおよぼさないような事象が発生した場合(連結子会社が新たな事業を開始した場合や翌事業年度に係る新たな会計システムを導入した場合など)であっても、「当該連結子会社の財務報告に係る内部統制に重要な変更があった場合」に該当し、当該変更のあった内部統制について、連結決算日における評価対象としなければならないのか。
(答え抜粋) 1.内部統制府令5条3項は、事業年度の末日が連結決算日と異なる連結子会社について、連結子会社の事業年度に係る財務諸表を基礎として会社の連結財務諸表が作成されている場合には、連結子会社の事業年度の末日における財務報告に係る内部統制の評価を基礎として行うことができる旨を定めているものであり、連結財務諸表を作成する際の連結子会社の事業年度の取扱いと同様にしているものである。
2.従って、連結子会社の事業年度に係る財務諸表を基礎として会社の連結財務諸表が作成されている場合において、連結子会社の事業年度の末日後に当期の連結財務諸表には影響をおよぼさないことが確実であると考えられる事象が発生した場合には、「当該連結子会社の財務報告に係る内部統制に重要な変更があった場合」には該当せず、連結子会社の事業年度の末日における内部統制の評価を基礎として行うことができると考えられる。
3.なお、内部統制府令ガイドライン5-1では、「当該連結子会社の財務報告に係る内部統制に重要な変更があった場合」の例として、合併などによる組織、決算方法および取扱品目の大幅な変更が例示されているが、連結子会社の事業年度の末日後に発生した事象については、個々の企業などの置かれた環境や事業の特性、規模などによってその重要性は異なることから、当該事象の当期の財務報告に係る内部統制に与える影響の重要性を勘案して、「当該連結子会社の財務報告に係る内部統制に重要な変更があった場合」に該当するかどうかを適切に判断することになると考えられる。
◆筆者の分析
合併などによる組織、決算方法および取扱品目の大幅な変更など、事象の影響の重要性を評価・勘案することが必要となります。
■【問81】内部統制報告書提出の取締役会の承認
(問81) 実施基準において、取締役会が財務報告の信頼性を確保するための内部統制の整備および運用を監督、監視、検証していないことが、全社的な内部統制の不備の例示として記載されている。このため、内部統制報告書を提出する際には、取締役会の承認などを経ておくことが必要になるのか。
(答え抜粋) 1.実施基準においては、財務報告に係る全社的な内部統制に関する評価項目の例として、「取締役会および監査役会又は監査委員会は、財務報告とその内部統制に関し経営者を適切に監督・監視する責任を理解し、実行しているか」を統制環境に記載している。
2.内部統制報告書は、経営者(代表者および最高財務責任者)が当該会社の財務報告に係る内部統制の整備および運用状況を評価した結果を記載して提出するものである。従って、経営者が適切な内部統制報告書を提出するよう取締役会などが監督・監視することは全社的な内部統制としても重要であると考えられる。
3.ただし、取締役会などによる当該監督・監視の方法などは、会社によりさまざまであり、内部統制報告書の提出に際しての取締役会の承認が必ずしも必要なものではないと考えられる。
◆筆者の分析
取締役会が決議機関であることを考えれば、一定の手続きで行われる「内部統制の評価結果」を、取締役会で覆すことができないのは明らかです。
■まとめ
何れにせよ、日本版SOX法の制度がプリンシプルベースであることから、監査法人への対応は、「会社としてこういう基準で評価・判断をしています。従って重要な欠陥には該当しません」というように、論理的な主張を展開することが必要です。
内部統制担当者としては、実施基準や金融庁のQ&Aなどの理論構成をうまく活用し、すんなりとその主張を監査法人に認めてもらうことが、監査の効率にも寄与することになります。
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