法規制に対応した情報管理でビジネスリスクを軽減せよ
2007年に情報管理の専門部署を立ち上げ、09年3月にはデータ保護ソフトの最新版「HP Data Protector software 6.1」を発表するなど同分野の強化を急ぐ米ヒューレット・パッカード。「情報管理部門はソフトウエア単体の価値で勝負するための組織だ」と同社のジョナサン・マーティン インフォメーション・マネージメント バイスプレジデント&ゼネラルマネジャは強調する。(聞き手は、吉田 洋平=日経コンピュータ)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Interview/20090415/328474/?ST=system
情報管理について、企業で何が問題になっているか。
情報管理(インフォメーションマネジメント)には大きく三つのトレンドがある。一つは、企業が扱う情報が毎年倍増していることだ。経済状況にかかわらず、情報は増加を続けている。
二つ目は、厳しい経済状況により、企業は情報管理の分野でもコスト削減に取り組まなければならないことだ。CIO(最高情報責任者)は一つ目の問題と二つ目の問題に同時に取り組む必要がある。いかに小さいコストで大量の情報を保存できるかを考えなくてはいけない。
三つ目は、新たな法規制への対応だ。前回、世界的な不況と言われた時期は2001年だった。不況により経済が弱体化した後、少し回復したところで米SOX法(サーベインズ・オクスリー法)が登場した。その後、電子情報開示に関するFRCP(連邦民事訴訟規則)の改定もあった。
今後も新たな規制が登場するたびに、企業は対応を迫られるだろう。日本でも日本版SOX法(J-SOX)の適用が始まっており、法規制への対応は大切な要素になる。
情報管理には当然、情報システムが役立つ。漠然と支援ソフトを導入するのでなく、三つのトレンドを踏まえた上で自社のニーズに合う製品を選ぶ必要がある。データベース(DB)サーバーの動作やメールの管理に支障をきたすほど、情報が爆発的に増えている状況を改善したいのか。事業の継続性を確保したいのか。最大の目的が何かをはっきりさせなければならない。
電子メール3通を発見できず、15億ドルの賠償金を支払う
情報管理システムの導入目的として特に多いのはどれか。
米国やヨーロッパで非常に話題になっているのが三つ目の法規制への対応だ。例えばFRCPの改定により、企業は裁判所の要請に応じて、自社で扱う電子情報を一定期間内に開示する必要が生じた。これを「eディスカバリー」と呼ぶ。
つまり、電子情報を素早く検索できる形で保有しておかなければならないのだ。必要な情報を発見できない場合のビジネスリスクは非常に高い。
一例として、モルガン・スタンレーが個人から訴えられ、敗れた訴訟がある。裁判所はモルガンに対し、ビジネスの証拠として3通の電子メールを提出するよう要請した。モルガンはさまざまなシステムやメールサーバー、バックアップ用のテープなどを2年間かけて探したが、要請のあったメールを発見できなかった。結果的に、約15億7000万ドル(1570億円)に上る賠償金を支払うことになった。
IT業界は他の業界に比べると訴訟が多いわけではないが、それでも当社でさえ、週1回は「過去の特定の情報を探してほしい」といった要請がくる。銀行や医療、ヘルスケア、石油など訴訟が多い業界では、eディスカバリーに対応できないことに起因するビジネスリスクは格段に大きくなる。
そのようなリスクを軽減するためにはどんな手段があるのか。
当社の「Integrated Archive Platform(IAP)」はeディスカバリーに対応するための製品だ。作成した情報にインデックス(索引)を付けて1カ所に保存するため、情報が非常に素早く検索できる。製品の価格は5000万円程度だ。この製品を購入すれば、ビジネスリスクの低減につながる。
HPで情報管理に関するソフトウエアを専門に扱うグループが発足したのは2年前の2007年。IAPは最初の製品に当たる。
HPでは毎週50Tバイト分のデータが発生
情報の増加への対応とコスト削減の両立についてはどうか。
3月に発表した「Data Protector software」の新版は、その問題を解決するための機能を備える。このソフトはバックアップとリカバリのための製品だ。世界中で2万2000社が使っており、市場の3倍のペースで成長している。企業に対し、コスト削減など経済的な側面からの提案ができる。
最新版の6.1では仮想マシンへの対応に加え、データの重複排除、暗号化などの機能を強化した。特に重複排除は保存するデータを減らし、コスト削減に寄与する。
例えば、当社CEO(最高経営責任者)のマーク・ハードが30万人の社員全員にメールを送ったとする。これを全部保存すれば、社員へのメールは情報の爆発的な増加を招いてしまう。Data Protectorはメールの重複を排し、1通だけを保存して、全員がそのデータを参照するようにできる。これで保存が必要なデータは激減する。
当社では毎週50Tバイト分のデータが発生している。その多くがメールだ。ビジネスのコミュニケーションの85%がメールによるものだ。多くの企業が当社と似たような状況にあるだろう。
このため、メールの重複排除はコスト削減効果が高い。Data Protectorを導入すると、TCO(総保有コスト)を50%削減できる。平均的な中堅の企業であれば約400万ドル(4億円)のコストメリットがある。
今後どのような分野が重要になると思うか。
「レコードマネジメント」だ。レコードマネジメントとは、情報の価値に応じて情報をとらえ、管理することを指す。今後2年間で、情報管理分野の市場はこの方向に進んでいくと考えている。これには「TRIM software」という製品で対応する。
企業の情報は大きく、「価値が非常に高い少量の情報」と「価値が低い大量の情報」で構成されている。価値が非常に高いが少量の情報はPowerPointのプレゼン資料などの形をとり、内容は定期的に更新される。価値が低い大量の情報の典型例はメールで、内容は変更されない。前者をビジネスレコード、後者をビジネスカンバセーションと呼ぶ。
レコードマネジメントとは、ビジネスレコードを管理することをいう。特に金融、保険、ヘルスケア、石油、ガスなどの規制が厳しい業界では、ビジネスレコードをきちんと管理する必要がある。ビジネスで何かを実行した際、どのように意思決定をしたのかについて、透明性を保つ必要があるからだ。
企業だけでなく、政府でもレコードマネジメントは重要になる。税金をヘルスケア、医療、教育などの分野で使う際に、どこにどれくらい税金を投じるかをどのような過程で決定したか、明確に説明できなければならない。ここでもビジネスレコードのマネジメントが大きな役割を果たす。
レコードマネジメントは、ビジネス上の意思決定の質を上げるのに役立つ。情報からビジネス的な知見を得られるからである。
<<前ページ 1 2
(吉田 洋平=日経コンピュータ) [2009/04/20]
スポンサードリンク