「BPMサイクル」を回し続けた企業が生き残る!
この連載の5回目(「BPMの定義」言えますか?)でも触れたが、BPMの考え方は、その前身となったビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)での反省を基に生まれてきた。
http://japan.zdnet.com/sp/feature/09bpm/story/0,3800092652,20391075,00.htm
BPRでは、経営の基盤となる組織やITにまで影響が及ぶ大規模な変革を一気に推し進めようとしたことで、変革プロジェクトそのものが自己目的化してしまうケースが多かった。そして、「BPR=人減らしの手段」という誤解も重なり、BPRは「一過性の活動」として徐々に忘れ去られていった。
BPMでは、こうした反省から、一過性ではなく、活動の「継続性」を重視している。「管理(良い状態を維持すること)」を意味する「マネジメント」という言葉には、「継続的な活動なしには企業の良い状態を維持できない」という思いが込められているのだ。
適応すべき変化は次々と起こる
では、なぜ継続的な取り組みが必要なのだろうか。その理由として、企業を取り巻く環境の変化スピードがますます速くなってきていることが挙げられる。
流行は目まぐるしく変化し、企業は事業化や規模拡大に必要な「時間」を買うため、積極的に合併や買収を行うようになった。今回の世界的な経済危機のように、これまでに経験したことのないスピードで経済状況が激変するような事態も起きている。また、日本版SOX法のような新しい法律が作られたり、規制強化のために既存の法律が改正されたりすると、ビジネスルールの変更や、ビジネスプロセスの変更を避けて通れないケースも出てくる。
こうした様々な変化に対し、企業はビジネスプロセスを改善することで次々と適応していかなくてはならない。もし成功体験に満足して改善を怠ると、その後の成長が見込めないばかりでなく、最悪の場合は淘汰されてしまうこともある。そうした事態を避けるためには、ビジネスプロセスを進化させるためにマネジメントし続けなくてはならない。
マネジメントする際の基本となるのは、改善活動では広く知られている「PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクル」だ。このサイクルをBPMに適用した「BPMサイクル」を継続して回すことで、企業を取り巻く環境の変化に応じてビジネスプロセスを改善することができ、競争力を維持できる。
様々な変化に企業が適応していくには、BPMサイクルを回し続けることが重要。一過性の取り組みになりがちだったBPRへの反省が「マネジメント」には込められている。
モニタリングは「数値」で行う
継続的にビジネスプロセスをマネジメントしていく上でポイントとなるのは、BPMサイクルの後半部分にあたる、「C(Check)」と「A(Action)」のフェーズだ。ビジネスプロセスがどのような状態にあるかをモニタリングし(C)、その結果を分析・評価して次の改善につなげる(A)という活動である。
まず、Checkのフェーズで重要なことは、ビジネスプロセスの状態や成果を「数値」で把握するということだ。「新しい取引先が増えてきているようだ」といった定性的な方法ではなく、「新しい取引先が10社増えた」というように定量的に把握するのである。数値で把握することで、以下のようなメリットが生まれる。
モニタリングする際に、勘や経験に左右されない、客観的な把握が可能
目標とする値を設定できる
比較が容易であるため、増加や減少などの変化をはっきりと把握できる
明確な数値で表せるため、社内を説得するときなどに強い材料となる
ただし、どのような項目をモニタリングするかは事前に十分に検討する必要がある。というのも、BPMでは、作業単位のプロセスで改善を行うのではなく、たとえば「新規顧客獲得」や「商品出荷」といった業務プロセス単位、さらには「利益率向上」「顧客満足度向上」といった事業・企業プロセス単位などの視点で改善を行おうとするからだ。
従って、モニタリングすべき項目は、企業が描いている「経営戦略」によって大きく異なる。具体的にどの項目に注目するかを決定するには、戦略志向の経営手法として知られる「バランスト・スコアカード」などを活用すると良いとされている。
業務や事業・企業単位のビジネスプロセスを、数値でモニタリングする。これがCheckのフェーズのポイントとなる。
モニタリングは入力や出力、ビジネスプロセス内、ビジネスプロセスの成果を最終的に評価する顧客といったポイントで行う。いずれも「数値」で表せる指標を用いて計測する。
改善方針のスタイルは3つ
Actionのフェーズでは、Checkフェーズで把握した数値を基に分析や評価を行い、次の改善に向けて具体的な方針を立てることになる。
この改善方針のスタイルには、3つのタイプがあると言われている。「理想モデル型」「カイゼン型」「ベストプラクティス型」である。
1)理想モデル型
「To-Beモデル型」などとも言われるが、現状(As-Is)を分析し、同時に今後目指すべき自らの理想像(To-Be)を設定。現状から理想像を目指して、改善を進めていくという方法をとる。
現状と理想像を設定し、理想像を目指した改善を進めていく「理想モデル」型。
2)カイゼン型
多くの製造業でこれまで行われてきた方法で、TQC(Total Quality Control)に代表される手法。現状のムダや重複などをきめ細かく分析し、繰り返しカイゼンを行うことで全社的なビジネスプロセスの最適化を図る。
現状を詳細に分析し、判明したムダや重複プロセスをそぎ落として最適化を図る「カイゼン」型。
3)ベストプラクティス型
ベストプラクティスとは、同じ業界や業務で最も成功している事例のこと。理想モデル型のように理想像を自由に設定するのではなく、すでに成功している先行的な事例を見つけだし、そのビジネスプロセスを取り入れることで改善を進める方法。
同一の業界・業務で成功したプロセスを取り入れて改善する「ベストプラクティス」型。
自分が関わっている業務、あるいは事業によっては、これらを組み合わせて改善方針を立てることも可能だ。どの方針で次の改善を進めるかが決まったら、もう一度「Plan」のフェーズに戻り、2回目、さらには3回目……とBPMサイクルを繰り返していくことになる。BPMは終わりのない取り組みなのだ。
いろいろと小難しい話になってしまったが、次回は、専門家の意見を元に、BPMの取り組みを現実にスタートさせるにあたってのヒントを探ることにしよう。
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