業務コストの削減策を逆提案 社内の“事情通”とタッグ
本命は従来システムを担当していたITベンダー。「当て馬」との不安が募る。東京デリカのPOSシステムを担当していた社内のベテランSEの協力を仰ぎ、リプレース商談に挑んだ。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090127/323542/
「最初はコンペに参加すべきかどうかためらったが、長年の夢だった基幹系システムの開発案件を受注できて本当にうれしい」。アイティフォーの流通システム事業部営業部第一グループ次長の相澤明則は喜びを隠さない。
相澤が担当したのは、かばんやアクセサリー類の企画・販売を手掛ける中堅企業である、東京デリカの基幹系システムの再構築案件だ。東京デリカの従来の基幹系システムは、20年以上前に構築したもので、老朽化が進んでいた。システムに関するドキュメントを整備しておらず、日本版SOX法(J-SOX)への対応も難しい状況だったという。
そこで同社は2005年9月から、基幹系システムの再構築を検討し始める(表)。基幹系システム再構築プロジェクトの責任者を務めたのは、東京デリカの常務である山田陽だ。同氏はまず、従来の基幹系システムのハードを納品した大手メーカーA社と、開発、運用・保守の実務を担当しているSIerのB社に相談した。
表●東京デリカがアイティフォーに発注するまでの経緯
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A社とB社は共に、小売業での実績が豊富なエス・エス・ジェイのERP(統合基幹業務システム)パッケージ「SuperStream」を提案。東京デリカは、SuperStreamの導入を前提に、2006年の約1年間、従来システムの課題や新システムの要件をまとめた。
東京デリカは2006年末までにRFP(提案依頼書)を作成し、2007年1月にA社とB社にRFPを提出。3月に、A社とB社から受け取った提案内容を見て、山田はがく然とした。A社とB社の見積額は、東京デリカの予算の約3倍だったという。予算は約1億円だった。
「当て馬かもしれない」との不安
そこで東京デリカは2007年3月、新たな開発委託先の候補としてアイティフォーに声を掛けた。アイティフォーは約15年、東京デリカの店舗POS(販売時点情報管理)システムの開発・運用を担当していた。
アイティフォーの相澤は、東京デリカのRFPを受け取る前から、同社が基幹系システムの再構築に向けて動いていることを知っていた。山田の相談に乗ることもあったからだ。
それが急に、開発委託先の候補になったのである。こうした状況から、アイティフォー社内には、“当て馬”になることを危惧する意見があった。「コンペの公平性を確保するためだけに、当社に声を掛けているような気がする」。
POS担当社員の力を借りる
「本気で取りにいくべきか」。こう悩んでいた相澤は、東京デリカ社内の状況を詳細に把握しようとした。
このために、東京デリカのPOSシステムを担当している、アイティフォーのソフトウェア第三事業部システム開発二部次長の根本大に、相談したのだ。根本の答えは「当社には、本気で提案してほしいと期待しているようだ」というもの。相澤は、コンペに真剣に挑むことにした。
「取りに行く」と決めたものの、A社とB社よりも不利な状況は変わらない。両社は、新システムについて先行して東京デリカと議論していたからだ。
東京デリカではSuperStreamのライセンス料金の高さが問題になっていることを、相澤は根本から聞いていた。そこで、販売管理システムには、小売業界に特化した自社製パッケージ「RITS」を、会計・人事・給与にはオービックビジネスコンサルタントが開発・販売する「奉行シリーズ」を適用することを提案した。これらのライセンス料金を合算しても、「SuperStreamよりは優位に立てそうだ」と考えたからである。
さらにシステムの性格に応じて、パッケージの導入方針を変えるべきだと提案した。「会計・人事・給与はパッケージの標準機能を採用し、開発コストを最小限に抑える」「販売管理システムについては標準機能をベースにするが、現場が混乱しないよう必要に応じてカスタマイズする」といった具合である(図)。
図●ITベンダー3 社に対する東京デリカの評価ポイント
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何度も訪問し提案のヒントを探る
東京デリカの山田は、相澤の提案に興味を持ったが、「社内を説得できるような決め手がない」と不安を抱いていた。RITSはSuperStreamに比べ、知名度や導入実績で劣ることが心配だった。
このころ相澤は、「A社とB社には実現することの難しいアイデアを提示することが必要だ」と考えていた。
相澤は根本と一緒に、東京デリカの利用部門やシステム部門を訪問。電話やメールでのやり取りを合わせると、その回数は3~4月だけで20回近かったという。
「目的は、RITSと現状業務とのフィット&ギャップ分析」と東京デリカには告げていたが、本当は違った。A社とB社と差異化できる提案のヒントを見つけ出そうとしていたのだ。
このヒアリングを通じて相澤と根本は、「基幹系システムの再構築と同時に、当社が担当するPOSシステムを機能追加・変更すべき」ことを山田に提案した。東京デリカの店舗では、消耗品の購入や店舗スタッフの勤怠管理といった業務を紙を使って進めており、書類の管理や取り扱いにかかる費用に年間500万円、店舗と本社で書類をやり取りするための配送コストに年間500万円かかっていることが分かったからだ。
「基幹系システムを任せていただければPOSシステムの改修も含め、1億2000万円で請け負います」。相澤は山田に訴えた。業務改善を実現できれば、POSシステムの部分は2年で投資を回収できることも伝えた。東京デリカの予算に近く、A社とB社の見積額よりも安かった。
「当社の業務改善策をここまで真剣に考え、投資対効果も定量的に示してくれた」。山田は相澤の提案姿勢を評価。2007年5月22日、東京デリカはアイティフォーに発注した。
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(岡本 藍=日経ソリューションビジネス) [2009/03/17]
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