不況こそ文書管理で生産性アップ――ボトムアップが鍵
統制一辺倒ではなく現場の生産性や効率を向上させる文書管理を考えてみたい。キーワードは「活用」だ――。
2009年02月02日 12時00分 更新
http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0902/02/news027.html
「文書管理」というと、2005年4月に施行された「e-文書法」、2009年3月期の本決算から対象となる「日本版SOX法」などといった法令に対応した内部統制を思い浮かべる人が多いはずだ。もちろん企業にとって、こうした法令対応は待ったなしである。ある程度のコストがかさんでも対応するほかない。
ただ、“統制の文書管理”だけではコストもかかるし、現場の負担も増えるだけ。導入してはみたものの、生産性が下がって売り上げが落ちてしまった――というのでは、急速に悪化する経済情勢の中、企業を継続させるための内部統制が企業生命を脅かすという皮肉な結果につながりかねない。
そこで、2009年2月の総務特集は「紙、空間、時間 3つの無駄をなくす文書管理」をテーマに、統制一辺倒ではなく現場の生産性や効率を向上させる文書管理を考えてみたい。
左からリコーの有田絢子さん(販売事業本部ソリューションマーケティングセンター)、キングジムファイリング研究室の矢次信一郎さん、PFUの楠忠和さん(イメージングビジネス営業統括部部長)、エプソン販売の浅野英威さん(プロダクトマーケティング部)
なぜ現場からか
「客先から契約内容の問い合わせがあったんだけど、契約書どこかな?」「あのお客さんの契約っていつ切れるんだっけ?」「この前見た提案書を真似したいんだけど、どこにある?」――。
現場の生産性や効率を考えた時、文書管理のキーワードは「活用」だ。契約書をしまった場所が分からないのはさすがにどうかと思うが、ただしまうだけでなく、ビジネス文書の多くは再活用することで大きく生産性を向上できる。もちろん、内部統制としての文書管理も大事だが、文書管理を行うことで、客先からの問い合わせに素早く回答したり、再契約のための営業活動をスムーズにしたり、提案書の再活用が可能になったりと現場にとってのメリットも大きい。
一般的に経営層が考える文書管理とは冒頭で述べたような、統制の文書管理になりがち。この場合、目的が社内に偏在していたビジネス文書の管理になるわけだから、“守りの文書管理”にならざるを得ない。一方、活用の文書管理を考えるなら、現場がポイントだ。現場の効率を上げるためという目的があるのなら、“攻めの文書管理”も実現できるはずである。
現場が活用するためのポイントは?
ポイント
選別 (1)法令で定められた書類とそうでない書類に分類
(2)そうでない書類を「再活用できるかできないか」で選別
(3)不要な書類を廃棄。よく見る書類だけにする
(4)完成前の書類を混ぜない
入力 アナログの場合:あらかじめ決めた見出しを付けてファイリングしたり、キャビネットの決まった場所にしまう
デジタルの場合:ドキュメントスキャナや複合機でスキャン
検索 アナログの場合:使う色や見出しに使う言葉を統一しておく
デジタルの場合:OCR機能などを使ってスキャンしたデータを検索できるようにしておく
活用するために必要な要件が「選別」「入力」「検索」。紙の状態でアナログに管理する場合も、デジタルツールやシステムで管理する場合もまず、その書類を管理するべきかどうかを選別する必要がある。法令によって管理が必要だと定められているものについては、管理する側に置く。ここまではあまり考えずに進められるはずだ。
選別は、法令で定めれられていないものが重要。簡単に言ってしまうとその書類が「再活用できるかできないか」で選別する。ここで「必要のない書類は捨てていく」(キングジムファイリング研究室で室長を務める矢次信一郎さん)。「仕事だと思って、業務時間内に時間を取ってやるべき。部署単位でインセンティブを用意して、廃棄キャンペーンをしてもいい」という。
とはいえ、なかなか捨てられない人もいそうだ。「あったらいいなと思うぐらいの書類だったら捨てる」というのはリコーの有田絢子さん(販売事業本部ソリューションマーケティングセンター)。PFUの楠忠和さん(イメージングビジネス営業統括部部長)も「1カ月以内に見ていない書類なら、これから先も見ないのでは」という。コクヨS&Tの津山倫巳さん(ドキュメントソリューション事業部チームリーダー)も「検索性を上げるには、3カ月、1年、3年スパンで不要な書類を見直す」と口をそろえる。アクティブな書類だけ選び出して、後は思い切って捨ててしまう――のもアリかもしれない。
方針にもよるが、完成前の書類は共有しない方がいいケースがある。例えば提案書。未完成なまま誰かに“活用”されてしまうと、大きな間違いにつながる恐れがある。作成途中なのか、完成版なのかが判別できないようなシステムの場合、未完成の書類を入れてしまうと、どれが完成したものかが分かりづらくなってしまうからだ。
入力と検索については、アナログかデジタルかで方法が異なる。書類が紙の状態であれば、あらかじめ決めた見出しを付けてファイリングしたり、キャビネットの決まった場所にしまうことが「入力」で、色などを統一し、見出しなどを分かりやすくすることが「検索」性を高めることになる。デジタルデータの場合はドキュメントスキャナや複合機での入力が一般的だ。この際、OCR機能などを利用してサーチャブルにしておくことで全文検索も可能になる。
デジタル化は必須ではない――現場が混乱するなら
文書管理が難しいのは導入の部分。アナログにせよデジタルにせよ、文書管理は新しいルールを導入することになる。「今までだってうまくやっていたのに、そんな文書管理なんか面倒なだけだ」とネガティブに思われないようにしたい。目的やメリットを分かりやすい形で説明するのはもちろん、なるべく面倒ではない方法を選ぶといい。
例えば、昔の書類については新しい文書管理のルールを適用しないのも方法だ。新規に作り出した書類からルールを適用していくのである。ルールに則って文書を入力したら、インセンティブを用意するような社内キャンペーンも効果的だ。
「入力」はシステムの影響も大きい。複合機やドキュメントスキャナなどを導入してデジタル化に取り組む場合、肝心のスキャンが面倒だと続かない。「複合機は共有なので、当然混んでいる。後回しになってやらなくなるパターンもあると聞く。ドキュメントスキャナについても紙詰まりが多かったり、操作方法が難しいと使わなくなってしまう」(キヤノンマーケティングジャパン広報)
デジタル化については、「原本管理だけのためなら不要」(エプソン販売プロダクトマーケティング部の浅野英威さん)という。前述の矢次さんも「作成段階でデジタルな書類であればそのままデジタルのシステムを利用できるが、アナログの書類をデジタル変換しようとするとコストがかかる。極力抑えるのも方法だ」と、すべてをデジタル化する必要はないという意見だった。
文書管理をやるかやらないかは労働環境のせい? 文書管理の考え方は、個々人が管理していた書類を会社のものとして管理するというもの。米国などの企業では労働流動性が高い。今日一緒に働いていた同僚が、明日になったら急にいなくなっていたということも少なくない。こうした環境で、属人的に文書管理していたら、担当者が辞めた瞬間に仕事が回らなくなってしまう。だからこそ、会社での情報共有の意識が強いのだという。
日本国内に目を移すと、今でこそ転職や派遣労働などによる流動性が高まってきているが、これまでの労働者のほとんどが終身雇用制。1つの会社に定年退職するまで勤めるのである。現在ではジョブ・ローテーションの制度などを持つ会社も増えてきたが、以前はそれこそ営業畑、経理畑、総務畑といったその畑でのベテランになることを望まれてきた経緯もある。ともすれば、文書を残して情報共有するよりベテランならではの“あうんの呼吸”で仕事をする方が効率的だったというわけだ。
とはいえ、今や国内の労働流動性も高まりつつあり、また最近では他社や他業種とのコラボレーションも増えてきた。文書管理を導入するのは、新しい労働環境に適応するためでもあるのだ。
会社の業務を知ることが文書管理、現場の暗黙知を共有すべし
ここまで文書管理の大筋を説明してきた。詳細については次回以降に譲るが、書類の分別や運用ルールなど具体的な部分は、それぞれの会社の業務フローに依存する部分が多い。逆に言うと、これといった一般的なルールがないことが文書管理の難しさでもある。
この難しさを前向きに考えると、文書管理とはとりもなおさず自分自身の業務フローを知る作業になる。「グループワークは暗黙知が増える」と言ったのはPFUの楠さんだが、文書管理に取り組むことで、こうした暗黙知を共有できれば、自然と業務効率の向上につながる。いるのかいらないのか分からない書類を捨て、どこに何があるのかが分かるようになれば、答えはもうすぐ分かるはず。
それに作業を続けていくうちに、もしかしたら、社内で同じようなことに取り組んでいる人たちにもぶつかるかもしれない。会社ごとに大きく異なる文書管理、成功の秘けつは社内の成功事例を探ることだという。
まずは現場の文書管理に取り組んでみるのがおすすめ。隣の部署にも伝播して、いずれは会社全体に――あなたが始めた文書管理がボトムアップのプロジェクトになるかもしれない。
キングジムがおすすめする個人でできる文書管理術
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