未曾有の経済不況でどうなる? 内部統制の動向を探る
2008年4月に施行された通称J-SOX法(金融商品取引法)の最大のヤマ場であろう内部統制報告、公表が4月以降始まる。1年の成績表でもある決算報告とセットになって、提出、公表となる。ほかの会社の内部統制の状況などがこれによって明らかになるとともに、投資家などの評価の動向にも神経をとがらせることだろう。
http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/0901/19/news007.html
当初は、4月以降、各社の内部統制の状況や統制レベル感を把握できることもあり、2年目の内部統制の計画、特にIT統制の本格化が加速するものと思われていた。しかし、米国発と言われている経済不況の大きな波に飲み込まれた影響が本格的に表面化するであろう2009年に、当初の見込み通りに内部統制の計画が進むものとは思えない。内部統制へ投資予定だった資金は、当然のことながら運営資金に回されることだろう。当初描いていたであろうIT統制の本格化も凍結される傾向になるものと思われる。
統制よりも企業存続に注力
この経済不況の下、大企業は別として、中堅企業以下の上場企業では、統制よりも企業存続に力を注がなければならなくなり、内部統制への注目度も低下するはずだ。2008年度と同等のレベルの統制の維持に徹するものと思われ、大きな変化は起きないのではないかと予測する。
逆に、初年度に多大な予算をつけて取り組んできた内部統制プロジェクトは、その規模の縮小化に動き出すことになるだろう。コンサルティング会社の変更をしたり、すべてを自社内部で完結する体制を作りコンサルティング会社との契約を切ったり、提供サービス内容を縮小したりすることが考えられます。内部統制導入コンサルティングをいったん契約満了し、運用コンサルティングは別の中堅以下のコンサルティング会社と契約締結するケースも見受けられることになるだろう。
運用フェーズにおいては、IT統制や業務処理統制の中でのIT化、システム化が内部統制の監査効率や業務効率を上げるポイントと言われていたが、現在の経済状況を考慮すると、投資意欲が鈍ることが予測される。どうしても、IT化やシステム化は、一時的に支出する金額が大きくなる傾向にあるため計画の先延ばしや再検討を余儀なくされる。2008年度を何とかマニュアル統制で乗り切れた企業については、もう1~2年程度、マニュアル統制を中心に内部統制の運用を進めていくことになるかもしれない。
SIerやメーカーでは、内部統制の運用ツールの市場投入を進めてきたが、これらの販売は計画に比べて大幅ダウンとなるかもしれない。ツールだけではなく、親会社やグループ企業間でのシステム統合なども延期となるかもしれない。内部統制関連ビジネス全体の硬直化、縮小化が予想されるだろう。
2009年は中堅以下の企業が中心に
一方で、金融庁や経済企画庁などでは、2008年度の内部統制報告書の提出を受けて、傾向などの情報発信が続くものと思われる。その中で、日本での内部統制スタンダードが作られていくだろう。2008年度は、大企業といわれる規模の会社がスタンダードを作ってきたが、2009年度以降は、中堅以下の企業が中心となるスタンダードが見えてくることになる。
今まで、中堅企業以下の内部統制関連の情報は、あまり市場に出てこなかった。これが、2009年度以降、データや傾向の形で表面化することで、自社との対比が可能になり対策が取りやすくなるのではないか。ただし、現在の経済状況を踏まえると、取るべき対策と取れる対策に差が生じることになるだろう。この差をどうやって埋めていくのかが、2009年度の大きな課題になるはずだ。
J-SOX法のもう一つの主役である監査法人にとっても、大きな変化が生じるだろう。日本初のSOX法の適用に際し、大手の監査法人では他国の先進事例を輸入することで日本に適用させてきた。中堅以下の監査法人では、これらの手法が取りにくく競争に加われなかった、もしくは対抗できなかったのが2008年度ではないだろうか。しかし、2009年度となると大手監査法人の内部統制監査手法の情報が世の中で公開されるようになり、それを引き継ぐ形で新しい競争が生まれるだろう。監査費用を抑えたい企業側にとっても、考えられ得る流れである。
新しい内部統制のスタンダードが生まれる
ただし、財務諸表監査と同一の監査法人が内部統制監査を行うというルールがあるため、監査業務自体の負荷が非常に高く、一人の監査人にかかる負担を軽減したいと考える監査法人側の論理も働き、内部統制コンサルティング業務を監査法人から引き離し、別の監査法人やコンサルティング会社に分離することも考えられる。重要になってくるのは、監査法人とのコミュニケーションだ。監査業務自体が2008年に比べて2009年以降はより透明性が上がり、綿密なプロジェクト体制になって乗り切っていくことになるはず。2008年と異なるのは、そのプロジクトに参画するメンバーの入れ替えが起こり得ると考える。
2008年は、大企業と大手監査法人を中心に「動き」を起こしてきた。2009年は、その流れを中堅企業が引き継ぐ形で、新しいJ-SOX法対応内部統制のスタンダードが作られる。企業、監査法人、コンサルティング会社、SIer、メーカーも含めて新しい切り口となる内部統制ビジネスに、現在の経済不況を絡めて2009年の日本の内部統制の最適化を探り続ける年になりそうだ。
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